スマートフォンで動作する研究用疲労チェッカーアプリに関する文献がEnvironmental and Occupational Health Practice誌に掲載されました

academic outputs

スマートフォンで動作するウェブアプリを使った継続的な疲労関連指標の測定について

一般向けには<疲労checker簡易版>を公開しています。詳細についてはこちらから。

要点

  • 労働者の疲労や認知機能を長期間・反復的に測定するため、スマートフォンのWebブラウザ上で動作する「疲労checker web版」を開発しました。
  • アプリには質問票、PVT(精神運動覚醒課題)、Flanker課題、n-back課題、生活時間記録機能が統合され、LINE連携による参加者管理や通知機能も備えています。
  • 実験室実験による検証では、アプリ版PVTの結果がゴールドスタンダード機器(PVT-192)と高い同期性を示し、疲労評価ツールとして十分な信頼性があることが示されました。
  • 基本的には所内での利用を前提としていますが、いくつかの条件の下で他の研究者にも利用されています。
  • 一般向けには、疲労checker簡易版を公開しています。利用方法についてはこちらもご覧ください。

内容

労働者の疲労は労働安全衛生上で特に注目度が高い課題の一つですが、従来の紙質問票による調査では、回収・管理の負担、入力ミス、欠測、匿名性確保など多くの課題がありました。また、疲労研究では質問票だけでなく行動指標の取得も重要ですが、心理課題の実施には専用機器や研究室での測定が必要となり、大規模調査の障壁となっていました。

そこで筆者らは、スマートフォン上で動作するWebアプリ「疲労checker web版」を開発しました。利用者はアプリのインストールを必要とせず、Webブラウザから質問票回答、生活時間記録、PVT、Flanker課題、n-back課題などを実施できます。さらにLINEと連携することで、参加者との連絡、測定リマインド、個別化された操作画面の提示を可能にしています。

アプリの精度検証として、12名を対象とした40時間断眠実験を実施しました。アプリ版PVTとPVTにおけるゴールドスタンダードであるPVT-192による測定結果を比較しました。その結果、平均反応時間、中央値反応時間、平均逆数反応時間、ラプス回数のいずれも高い時系列同期性(CCF>0.85)が確認され、アプリ版PVTが疲労や覚醒度の変化を適切に捉えられることが示されました。(なお、測定数値自体はアプリと専用機器間で大きな差がありました)

実際の運用では、論文執筆時点で6件の研究プロジェクトで571名から24,675件のデータを収集しました。研究者は調査期間中にリアルタイムで測定状況を確認できるため、欠測の早期発見や参加者への介入が可能となり、高品質なデータ収集を実現できました。

本システムが産業保健専門職による労働者の健康管理だけでなく、労働者自身による疲労のセルフモニタリングにも有用であると考えられます。一方で、測定結果は個人間比較や人事評価ではなく、個人内変化や集団レベルの傾向把握に利用すべきである点に特に注意が必要です。


論文情報

掲載誌Environmental and Occupational Health Practice
論文タイトルEnhanced repeated measurement of psychological tasks and form questions via a web-based mobile app
著者Yuki Nishimura, Hiroki Ikeda, Shun Matsumoto, Shuhei Izawa, Xinxin Liu, Atsuko Tamaoki, Tomohide Kubo
DOIdoi://10.1539/eohp.2025-0019