疲労管理の観点から、一月あたりに必要な夜間睡眠機会の数を考察
要点
- 実際に病院で交代勤務制で働く看護師を対象に、疲労を溜め込まないために最低限必要な夜間睡眠の回数を調査しました。
- 月間の夜間睡眠回数が13回を下回ると、疲労に関連した指標が特に悪化する傾向にありました。
- 交代勤務のスケジューリング(シフト組み)において、夜間睡眠の機会を確保することの重要性を示した結果だと言えます。
内容
ヒトは睡眠をとらないと、疲労が蓄積していき、重大な結末をもたらすことがあります。そして、疲労から回復するには、夜間の睡眠よりも昼間の睡眠のほうが回復力が高いという先行研究があります。一方で、シフト制で働く労働者は日勤労働者と比較して夜間睡眠をとれるチャンスが少なくなるため、疲労からの回復機会が制限されている現状にあります。
そこで本研究では1か月間の睡眠ログのデータを用いて、月当たりの夜間睡眠の機会が労働者(今回は看護師)の疲労に関するの諸指標とどのように関連するか、フィールド調査を行いました。
526名の看護師を調査対象とし、夜間睡眠が12回以下、19回以下、24回以下、それ以上のグループに分けて解析しました。疲労関連の指標は、過度の疲労症状を評価するEFSI(Excessive Fatigue Symptom Inventory)、睡眠障害を評価するPSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index)、そしてヒヤリハットの回数を採用しました。
結果、夜間睡眠が12回以下に制限されていた群では、十分な夜間睡眠機会を持つ看護師と比べてEFSIやPSQIの結果が悪化し、ヒヤリハットの発生率も高いことがわかりました。これは、つまり、夜間睡眠の機会がへるほど、疲労関連の指標が悪化する関係にありました。
夜間労働者に支えられている現代社会では、夜に働く人をゼロにすることはできません。一方で、労働衛生上の問題を防止し、生産性を維持するために、適切な睡眠機会の提供が必要であることが示されました。
夜働く人を含む勤務スケジュールを作成する際には、個々人が夜間の睡眠機会を十分に確保できるよう、特に気を配る必要があるでしょう。
論文情報
掲載誌 | BMJ Public Health |
論文タイトル | How many monthly nighttime-sleep opportunities are optimal for recovery from fatigue among shift-working nurses? A 1-month sleep log observational study to test anchor nighttime sleep in Japan |
著者 | Tomohide Kubo, Hiroki Ikeda, Shuhei Izawa, Yuki Nishimura |
DOI | 10.1136/bmjph-2024-001438 |