テキストマイニングを併用した、職場における暴言の健康影響の調査結果
要点
- 先行研究から、職場における暴言は労働者の精神的な健康に悪影響があることが示されてきました。
- 一方で、暴言の内容(暴言の言葉そのもの)の影響まで掘り下げて健康影響を検証した論文はありませんでした。
- そこで本研究では、日本の小売・卸業者の労働者を対象にWEB追跡調査を行い、彼らが職場で実際にばく露された暴言の実例を収集して、その睡眠やうつ症状といったアウトカムとの関連を検証しました。
- その結果、以下のようなことが示唆されました。
- 「死ね、殺す」といった暴言被害はうつ症状と関連すること
- 「お前仕事遅い、クビだ」といった暴言被害は睡眠障害と関連すること
内容
この論文では、職場での言語的な暴力(すなわち暴言)の内容が、労働者のうつ症状や睡眠障害にどのように影響するかを調べました。
特にこの論文の特徴的な点として、テキストマイニングという手法を用いて、労働者の方々が実際に言われたことのある暴言の内容を仕事能力への批判、人格や容姿への攻撃、命に関する脅迫などの4つのタイプに分類し、うつや睡眠障害といった健康影響との関連を見ています。
その結果、命に関する脅迫はうつ症状のリスクと、仕事能力への批判は睡眠障害のリスクと有意に関連していることが分かりました。
したがって本研究は、職場での言語的暴力の内容によって、労働者の健康への影響が異なることを示した初の研究となります。
職場での暴言を防止するとともに、被害者への適切なケアを提供することが、重要となるでしょう。
論文情報
掲載誌 | Occupational Medicine (Oxford University Press) |
論文タイトル | Impacts of Workplace Verbal Aggression Classified via Text Mining on Workers Mental Health |
著者 | Yuki Nishimiura, Shun Matsumoto, Takeshi Sasaki, Tomohide Kubo |
DOI | 10.1093/occmed/kqae009 |